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【小説講座⑧】物語の冒頭・物語の形式・物語の時系列

「物語の冒頭」と「物語の形式」

小説は、物語の冒頭で読者の興味を引く必要があります。

 

1冊読むのに2時間~4時間ほどかかる小説は、冒頭を数ページ読んで「読むかどうかを決める事」があるからです。

 

ここで「おもしろそう」と感じさせられない場合、読者は読むのをやめてしまいます。

物語の冒頭は、よく考えて書きましょう。

 

 

 

 

物語のよくある形式


●「起承転結」
起承転結にすると、穏やかな日常から始まり、だんだんと盛り上がって、最後に一番盛り上がって、終わりを迎えます。

 

長編に良く使われる方法ですが、盛り上がるまでに時間がかかってしまいます。

 


●「承転結」
「承転結」にすると、最初が「承」になるため、盛り上がってる場面から始める事ができます。

 

「起」は「承」の中に含まれ、盛り上がりの邪魔にならない所で役割を果たします。

 

TVアニメや漫画の1話をイメージしてみてください。

 


「最初は何気ない日常のシーンが流れますが、1話の真ん中あたりで事件が起こり、盛り上がってきてこれからだという所で2話へ続きます」

 

1話で盛り上がるシーンを入れる事でお試しで見た人の心を掴み、盛り上がったまま2話に引っ張る事で、読者に2話も見たいと思わせる事ができます。

 

 

●「転・起承転結」
「転・起承転結」にすると、冒頭から衝撃的なシーンから始められます。

 

最初の「転」で読者にインパクトを与えた後で、「1年前……」というように時系列の最初から始まります。

 

TVアニメや漫画をイメージしてみてください。


「1話の冒頭でいきなり主人公(少年)が少女の刀で刺されて倒れてしまいます。


主人公は少女を見上げながら意味深なセリフを言って気を失います」

 


「歌やタイトルの次のページは、何事もなかったかのように1年前とテロップが出て、日常が始まります」

 

物語は「最初の転」に向けて進んで行き、「最初の転」を迎えた後、「本当の転」でさらに衝撃的な展開を目にします。

 


●「結・起承転結」
「転・起承転結」とほぼ同じですが、主人公が物語を振り返っているように「過去形」でモノローグが入ります。

 

「この時の僕は、あんな事になるなんて微塵も感じてなかった……」などのように、この先の不穏な展開を予感させるモノローグが入ったりします。

 

物語の始まりは、全てが終わった静かなシーンから入り、過去を振り返るように「起」に戻ります。

 


TVアニメや漫画をイメージしてみてください。


「戦争が終わり、立てかけてある写真に向かって穏やかにしゃべっている主人公。


セリフは写真のみんながすでに死んでいなくなっている事を予感させます」

 

「歌やタイトルの次のページは、1年前などに戻り、死んだと思われる人たちが登場して物語は進みます」

 

物語の最初に「結果」を見せる事で、どうしてそうなったのかを見ていく事になります。

 

 

 

物語の時系列

「物語の時系列」とは、物語の時間の流れの事をいいます。

 

「起承転結」の場合は、「現在→現在→現在→現在」となり、物語の時系列は順当に進んでいます。

 

「結・起承転結」の場合は、「未来→現在→現在→現在→現在」となり、物語の時系列に変化を与えています。

 

時系列に変化を与える事で、インパクトを与えたり、興味を引いたり、余分な所を省いたり、テンポを良くしたりする効果があります。

 

 

 

順当に進める

一番シンプルな物語の書き方は、「物語が始まった所から、物語が終わるシーンまで」順当に書いていく方法です。

 

ビデオカメラでの撮影を例にすると、「ビデオカメラの録画ボタンを押した後は、ずっと撮り続け、最後まできたら録画を止める」ようなイメージになります。

 

とても書きやすい方法ですが、「最初から最後まで」を全く編集なしで読者に見せるような形になるため、単調で平凡になりやすいので注意が必要です。

 


桃太郎を例にすると、「おじいさんは芝刈りに行き、おばあさんは川へ洗濯に出かける所から始まり、流れてきた桃を拾い、桃太郎が生まれて成長し、鬼の話を聞いて鬼退治に出て、犬たちを家来にして、鬼ヶ島までの道中があり、鬼ヶ島に到着して、鬼と戦って勝利する」までを、書いたような形になります。

 

 

 

書いた物語を編集してみる

「最初から最後まで」を順当に書いた物語が平凡になってしまった場合は、編集をする事でガラリと印象が変わります。

 


●物語のスタート地点を変更する

もし冒険モノなら、「冒険に出る前の主人公が弱い地点」からスタートさせていた物語を、思い切って「ある程度冒険に慣れて、強くなった地点」からスタートさせる方法もあります。

 

この方法だと、主人公が弱いシーンをごっそりとカットする事ができ、その分、強くなってからのページを多くする事ができます。

 

弱い主人公が、小さなトラブルに悪戦苦闘してるシーンよりも、ある程度強くなった主人公が、それでも苦戦するシーンの方が盛り上がります。

 


●途中で回想シーンをはさむ

「回想」とは、過去にあった事を思い返す事です。

 

物語のスタート地点を変更する事で、「主人公がなぜ冒険に出たのか」という部分もごっそりカットしてしまいましたが、それを語るべき時期がきたら、回想シーンという方法で物語の中に挿入します。

 

回想シーンにする事で、「なぜ冒険に出たのか」という部分だけをピックアップして読者に表現して、その後のずるずる間延びする部分を省いて、先の物語を進める事ができます。

 


●いらない部分をカットする

平凡だったり、間延びしていると思うシーンは、思い切ってカットしてみましょう。

 

主人公が冒険中に大怪我をして、冒険に出られなくなったとします。


「その間に主人公が何をしていたか」というエピソードは、読者にとっておもしろいものかどうか、よく考えてみてください。

 

あとあと意味が出てくる重要なシーンの場合は必要ですが、省いても問題がない場合は、入院や療養中のシーンはカットします。

 

 

 

「順当」で書いた物語を編集してみる

桃太郎の物語を例にすると、以下のようにする事もできます。

 

桃太郎が、犬たちと旅をしてる途中からスタートします。

 

旅の途中で、犬たちになぜ鬼退治にいくのかと聞かれ、「自分が桃から生まれ、おじいさんとおばあさんが育ててくれた事や、恩返しとして鬼退治をするために旅に出た事」を回想シーンとして表現します。

 

鬼ヶ島にたどり着き、鬼とバトルをします。

 


前半をばっさりカットした分、ラストシーンにページを割きます。

 

桃太郎たちは鬼との戦闘に苦戦し、桃太郎のピンチを犬たちが身をていして助けます。

倒れる犬たちを見て、桃太郎は犬たちとの出会いや旅の間の出来事を思い出します。
ここも回想シーンとして表現します。

 

怒りで奮い立ち、最後の力で桃太郎は鬼を倒します。

 

その後、桃太郎は犬たちを手当てして、おじいさんたちの元へ帰ります。